ビザvisa
2023年ビザ最新情報
新卒者・若手採用のビザ
【H-1Bビザ】
H-1B資格
米国市民や永住権保持者以外を採用する場合は、ビザスポンサーを検討しなければなりません。通常大卒者を採用する際にはH-1B専門職ビザを申請します。H-1Bビザは基本的には4大卒者(もしくは同等の資格をもつもの)を対象としており、大学の専攻科目がポジション内容と一致していることが条件です。ただ、近年米国移民局の審査が大変厳しくなっているため、審査はかなり難航することが予想されます。
H-1B年間枠
H-1Bの申請受付は毎年4月1日から開始されますが、近年H-1B申請者は年間6万5千枠(アメリカの修士号・博士号取得者は追加2万枠)を大幅に上回っているために、申請の受け付けは4月の初週で締め切られていました。
しかし、2020年からは4月1日の申請開始前に、H-1B雇用主のオンライン登録が義務付けられました。2023年度は、3月1日東部時間午後12時からから3月17日東部時間午後12時までの間に移民局のオンライン・アカウントに会社情報とH-1B申請社員の情報を登録します。オンライン・システムが無作為に抽選を行い、3月末までに当選者情報がオンラインに掲示されます。当選者は4月から6月の間にH-1B申請書類を移民局に提出します。当選者は、Submittedという表示がSelectedという表示に変わります。
米議会が年間枠を増やさない限りは、今年もH-1B申請者は年間枠を大幅に上回ることが予想されます。ただ、米国の修士号や博士号保持者は一般枠で当選しなければ、再度大学院枠の抽選に掛けられるので、大卒者よりは当選確率が少し高くなります。
H-1B枠免除団体
例外として、非営利団体の大学機関、大学機関と連携プログラムがある非営利機関(例えば、大学からインターン生を受け入れている病院など)、もしくは政府や民間の非営利のリサーチ団体などは、H-1Bの年間枠の制限をうけません。これら免除団体は、年中いつでもH-1Bを申請することができます。
H-1B遵守事項
H-1B雇用主はその地域の平均賃金もしくは同職社員に支払う賃金のいずれかの高い方をH-1B社員に支払う義務があります。H-1Bはフルタイムでもパートタイムでも申請できますが、フルタイムの場合は最低でも年間平均賃金、パートタイムの場合は平均時給を支払う義務があります。
また、H-1B雇用主はH-1B申請前にH-1Bの雇用条件(職務、賃金、勤務場所、勤務期間などの情報)を明記した通知書を社内2箇所(本人の勤務地)に10営業日間掲示する必要があります。
その他にもH-1B雇用主はH-1B期限満期以前に会社の都合でH-1B社員を解雇した場合、その社員が自国へもどるための渡航費用をオファーする義務があります。
申請料金
初回申請料金$460、詐欺防止費用$500、ACWIA追加申請料金$1,500(社員25名以下の場合は$750)の3種類あります。50名以上の社員を抱える企業、50%以上の社員がH-1BかLビザ保持者であれば、$4,000の追加申請費用が課せられます。15日の特急申請を希望する場合は、さらに$2,500の特急料金がかかります。
なお、H-1B枠免除の対象となる非営利団体はACWIA追加申請料金が免除されます。
就労開始日
無事にH-1Bが承認されたら、同年の10月1日以降からの就労開始となります。
H-1Bチリ・シンガポール用別枠
H-1Bの6万5千の年間枠の内、6,800枠はチリ(1,400)とシンガポール国籍者(5,400)に割り当てられますが、この枠は毎年償却していないため、チリ国籍者とシンガポール国籍者は年中H-1Bの申請が可能となっています。この特別枠での申請は移民局への申請が必要ないので、チリ・シンガポールの米国大使館・領事館にビザ申請費用$190を支払って直接ビザの申請を行うことができます。また、この特別枠は詐欺防止費用$500の支払いが免除されます。
H-1Bの年間枠が圧倒的に不足しているために、外国人の新卒者や若手を採用できずに困っている企業が多くいます。大卒者の採用では、H-1B以外の選択肢として、カナダやメキシコ国籍保持者用のTNビザ、オーストラリア国籍保持者用のE-3ビザ、研修生用のJ-1やH-3研修ビザも検討できるでしょう。
TNビザ
TNビザは、USMCA条約(旧NAFTA条約)によりカナダやメキシコ国籍保持者対象に作られたビザです。TNビザには年間枠がないため、年中いつでも採用が可能です。ただし、NAFTAの特定職業リストにある職種に限られており、その職業に関連する学位修了者に限ります。主にエンジニアなど理系学位を中心としており、文系では会計や経済アナリストなども含まれています。同じTNビザでも、カナダ国籍保有者は米国へのビザが免除となるため米加間の国境で申請できますが、メキシコ国籍保有者は駐墨米国大使館か領事館にビザ申請費用$160を支払ってビザ・スタンプを申請しなければなりません。
E-3ビザ
E-3ビザとはオーストラリア国籍者専用のビザで、申請者の資格はH-1Bとほぼ同じ内容です。このビザは年間枠が10,500ほどありますが、年間枠がなくなるまでは、年中いつでも申請が可能です。E-3ビザは移民局に申請をする必要はなく、申請者はオーストラリアにある米国大使館か領事館にビザ申請費用$205を支払って直接申請することができます。
J-1ビザ
J-1研修ビザは関連学位や経験がある人が対象です。J-1研修ビザはアメリカ以外の国の大学や短大を卒業して、さらに米国以外で1年以上の関連職務経験があれば、J-1スポンサーの企業研修プログラムを通して、最長18ヵ月(旅行業界の場合は12ヶ月まで)まで研修を行うことができます。米国以外の国で学位を取得していない場合は、米国外で5年間の関連職務経験があることが条件です。J-1はオン・ザ・ジョブ・トレーニングが許されますが、人材派遣業界はJ-1の研修をすることができなくなりました。また、企業研修のJ-1プログラムに参加する日本国籍者には該当しませんが、出身国によっては、研修終了後2年間の本国滞在要求が課せられることがあるので、事前にJ-1スポンサーや専門家に問い合わせた方がよいでしょう。
J-1ビザはまずJ-1スポンサー団体に研修計画書を提出して、ビザ面接に必要なDS2019を発行してもらいます。J-1スポンサー団体のスポンサー費用は団体によってまちまちで、また研修期間によってもことなりますが、通常アメリカでの保険なども含めて$2,000〜$3,000+ほどかかります。米国大使館でのビザ申請費用は$160となります。
H-3ビザ
H-3研修ビザは関連学位や経験がない人を対象としており、移民局に申請書類と申請費用$460を研修計画書と一緒に提出します。研修は教室内での講義を主体としているため、現場での研修は最小限におさえなければなりません。最長期間は2年間ですが、2年間を使いきってしまうと国外に6ヶ月間滞在しなければ再度H-1BやLビザで米国に入国することができなくなります。移民局からH-3が承認されたら自国の米国大使館か領事館にビザ申請費用$190を支払って、ビザスタンプの申請をします。
J-1もH-3もいずれも企業内研修を通じて自国では得られないような技術を米国で学ぶことにより、研修終了後は自国に帰り、その知識や経験を生かすことを目的としています。また、いずれの企業研修も、知識や技術の向上が主目的であるため、正規従業員のように生産的業務に従事することはできません。
配偶者の就労資格
E-1、E-2、 E-3、J-1、L-1ビザの配偶者は就労許可を申請することができますが、H-1Bビザの配偶者は永住権の申請を開始して一定条件を満たすまでは就労ビザを申請することができません。なお、配偶者の就労許可証には就労職種に制限はありません。申請方法は、申請費用$410、指紋押捺費用$85と申請書類I-765を添付書類と一緒に移民局に持参し、申請します。審査期間はおよそ90日ほどです。
尚、2021年11月の米国移民局による新方針に基づき、EとLビザ配偶者は就労カードがなくても就労できるようになりました。今まではI-9のList Cの就労資格の証拠書類として就労カードを提出していましたが、2022年1月31日以降アメリカに入国したEとLビザ家族のI‐94入国記録には、滞在ビザ種類に配偶者はS、子供にはYという文字が追記されます。つまり、配偶者はE-1S、E-2S、L-2S、子供はE-1Y、-2Y、L-2Yというビザカテゴリーが記入されます。EとLビザ配偶者はこのSという記載のあるI-94をI-9のList Cの就労資格の証拠書類として提示することができます。
F―1学生の就労資格
F-1の学生は卒業後に大学の専攻と関連する職種で1年間就労することができます。そのためには卒業前にOptional Practical Training(OPT)という就労許可証を申請します。また、理数系専攻の学生であれば、OPTの就労期間をさらに2年間延長することができます。これをSTEM-OPTといいます。ところが、新型コロナの影響でOPTの審査が非常に長引いているために、卒業後OPTが届くまで何か月も就労できない問題がおきていました。このような問題を解決するために、OPT就労許可書を申請する人は、特急申請料金$1500を支払えば特急申請サービス(I-907)を利用できるようになりました。2023年3月6日からは、既にOPTを申請中の人だけ先に特急申請を申請することができるます。4月3日からはOPTを新規に申請する人も特急サービスを利用することができるようになります。
タグ: 2022, Bビザ, ESTA, Eビザ, H-1Bビザ, Lビザ, Lブランケット, visa, ビザ, 新卒者, 特急料金, 配偶者の就労資格
大蔵 昌枝 弁護士
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1987年東京外国語大学中国語学科卒業。2002年サウス・カロライナ大学経営学大学院・ロースクール卒業。経営学修士号(MBA)・法学博士号(JD)取得。U.S. CPA試験合格。日本にて証券会社や製造会社の国際事業部の勤務を経て、現在はジョージア州アトランタ市のテイラー・イングリッシュ・ドゥマ法律事務所のパートナー。日本語、英語、中国語の3ヶ国語に精通し、日系情報誌やウェブサイトに移民法記事を多数掲載。
著書:アメリカの陪審制度と日本の裁判員制度―陪審制の発展と意義(エディックス出版、2011.2、大蔵著)
研究者・留学生のためのアメリカビザ取得完全マニュアル(羊土社、2018.12、大蔵著)