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応急処置の方法


【心肺停止状態(CardioPulmonary Arrest)】

突然倒れた時は、心臓発作、心筋梗塞(Heart Attack)、強い立ちくらみ、てんかん(Epilepsy)、脳卒中などが考えられる。倒れた時の状況を医師に詳しく報告しなければならないため、病人の意識の状況、顔色、汗や熱、脈拍などを見る。また倒れた時に、頭部やその他の部分に打撲や外傷を受けていないかも確かめる。

応急手当:心臓マッサージ

  • 大人の場合
  1. 病人を仰向けに寝かせる。
  2. 救助する人は病人の右側に中腰で立ち、片手を胸(肋骨の下半分くらい)の上に当て、もう一方の手を重ねる。患者の胸の下半分の付近に置く。
  3. 肘を曲げずに、上半身の体重をかけて胸が5cm下がる程度に垂直に圧迫する。あまり強く押すと、骨にひびが入ったり、折れたりするかもしれないが、これを恐れずしっかり押すのが大切。この動作を1分間に100回の割合で続ける。
  4. 2分おきぐらいに、心臓マッサージの合間を見つけて脈の有無を確認してみる。せいぜいほんの数秒の確認にとどめ、ひたすら心臓マッサージを途切れることなく続けることが大切。
  • 1〜8歳の幼児、または子供の場合

片手の手のひらの根元を患者の胸の真ん中に置き、大人と同じ5cm下がる程度に圧迫。1分間に100回の割合で行う。

  • 乳児の場合

胸壁の厚さの三分の一の深さを目安に指を使って圧迫するが、一般に4cm押すことが薦められている。赤ちゃんなのにかなりの深さであるから勇気を持って押すことになる。

【自動体外式除細動器(AED)】

いわゆる心臓ショック装置である。学校や飲食店などの街のいたるところに設置されるようになってきた。特に、突然に意識消失をして倒れこむ大人は、心室細動と呼ばれる不整脈を原因としていることが多い。近くに自動体外式除細動器(以下AED)がある場合は、これを速やかに入手し、AEDのスイッチボタンを入れる。スイッチをいれると、あとは次に何をすればよいかの指示が機械から自動的に音声で説明されるので、これに従うだけでよい。まずは、指示に従い2枚の電極シートを胸部に張り、AEDが心電図を自動的に解析するのを待つ。AEDが解析中である旨を音声(analyzing the rhythm)で伝えるので、次の指示を待つ。患者が心臓ショックを要する状態にあることが判明すると、ショックが必要(shock is advised)との音声が流れる。充電中(charging)の音声の後に、ショックしてください(shock the patient)が聞こえたら、ショックボタンを押す。この際、倒れている患者に誰も触れていないことの確認が必要である。万が一触っている人がいると、その人までもショックを受けることになり危険である。効果がなければ心臓マッサージを再開継続し、2分おきにAEDのショック治療を繰り返し、救急車の到着を待つ。

【窒息(Choking)】

自分で少しでも咳ができるのであれば、どんどん咳をさせ、のどに詰まった異物を自ら出させるのが最良の方法。子供に多い事故なので、十分に注意したい。のどに異物が詰まって話せない時は、のどに手を当てていることが多く、それは救助を求めるシグナルである。話すことができれば慌てることはないが、咳ができなかったり、話せなかったりするのは、緊急のサインであり、以下の処置をする。

応急手当

  •  大人の場合
  1. 患者を前かがみに倒しておいて、横に立ち左手で胸を支え、右手のひらの根元で背中の上のほうを強く4回叩く。
  2. 1. でだめな場合は、病人を座らせ、救助者が後方より抱き抱える姿勢となる。そして病人のみぞおち部に拳骨(げんこつ)を当てもう一方の手のひらで押さえるようにして背中上方に向かって強く引き上げる。必要に応じて5回まで勢いよく背中のほうへ引き上げる。
  3. 背中たたき4回、腹引き上げ5回を試みてもだめで、まだ意識がある場合は、2. の動作を繰り返す。もし意識を失ったら、患者をそっと床に仰向けに寝かせ、すぐに救急車を呼ぶ。まず口の中を指で横に探り、異物があれば取り除き、気道確保の体位を取る。次に患者の上にまたがり、両手を合わせてみぞおちに当て、頭のほうへ強く押す。これを必要に応じて5回繰り返し、口の中を指で探る。そして人工呼吸を試みる。救急車が来るまでこれを繰り返す。
  •  自分で処置する場合
  1. 指をのどに入れ、舌を押し下げて一気に咳をする。
  2. いすの背もたれなどを利用し、腹部圧迫法を一人で行う。
  •  子供の場合
  1. 乳児は腕の上に腹ばいにし頭を低くする。この時、自分の腕を太ももに乗せるとよい。背中を手のひらで強く叩く。5回まで繰り返し、まだ取れない時は、仰向けにして片手で乳児の背中を支え、別の手の人さし指と中指で胸の下半分を強く押す。5回まで繰り返し、異物が出たかどうか確認。呼吸が止まれば、救急車を呼び人工呼吸を開始する。
  2. 少し大きい子供は、抱きかかえて膝の上に乗せて背中を叩く。意識がある時は、できるだけ子供に強い咳をさせる。もしそれがだめで呼吸困難がひどくなったらば、大人の項で述べた腹部圧迫法を同じように試みる。場合によって10回まで、または異物が出てくるまで連続で行う。

気道確保

気道とは、口や鼻から肺までの空気の通路のことである。意識を失ったり、嘔吐したりした時に、その吐物で気道が詰まって肺に空気が送り込まれず、窒息死することがある。このような場合に、気道に吐いたものを詰まらないようにし、呼吸しやすくさせるのが気道確保の体位。まず、病人を寝かせ、入れ歯をしていたら入れ歯をはずす。人工呼吸や心臓マッサージなどの処置の際には、気道確保の体位を整えることで高い効果が期待できる。

応急手当

患者を仰向けに寝かせ、下あごを引き上げる。こうするとのどが伸びて、空気が通りやすくなり、気道が確保される。

気道確保が必要なケース

  • 意識を失っている時

意識不明になると、あごや舌、首の力がなくなり、舌根が奥に落ちて、気道をふさいでしまう。そのため、気道を確保するだけで、呼吸が正常に戻ることもある。

  • 呼吸困難の時

この場合も気道確保だけで呼吸が正常に戻ることがある。

  • 人工呼吸をする時

まず気道確保の体位を取ってから行わないと効果がない。

  • 吐いた時

吐物で窒息しないように、顔は横に向ける。吐物が見える時だけ指で取り除き、気道確保の体位を取る。吐物が見えない時は、決して指を突っ込んだりしないこと。幼児の場合、余計に吐物を押し込むことになり、窒息させることがある。

  • 乳児の場合

無理に首を強く曲げると、逆に気道をふさいでしまうので気を付ける。両手で下あごを押し出すだけで、気道は確保される。

【人工呼吸(Mouth to Mouth Resuscitation)】

意識を失い呼吸が止まっていたら、すぐに心臓マッサージを始めるが、何人も手助けをしてくれる人がいるなど余裕のある場合は、気道確保の体位を取り、人工呼吸を施す。効果的な人工呼吸は、口から口へ、または口から鼻へ呼気を吹き込む方法。人が吐き出す息の中にも十分な酸素が残っているので大きな効果がある。

  • 口から口の方法
  1. 仰向けにし、口の中に異物があれば取り除く。
  2. 気道確保の体位を取る。
  3. 右手の親指と人さし指で病人の鼻の穴をつまみ、息が漏れないようにし、手のひらで額を押し下げる。
  4. 病人の口を覆い、できるだけ呼気を吹き込む。この時、病人の胸が膨らむのを確認する。この動作を30回の心臓マッサージをする度に2回続けて行う。病人に息が吹き込まれると、胸が膨らみ、拡張され、前胸壁が少し持ち上がるようになる。また、息が出る時は空気が肺から出て胸がしぼむ。
  • 口から鼻の方法

一般的には、口から鼻への人工呼吸は避け、口から口への方法で行う。しかし、病人が口を開けられない時や口の中をけがしている時には、鼻から行う。

  1. 気道確保の体位を取る。
  2. 下あごを手で押し上げて、唇を閉じる。閉じにくい時は、親指を使って閉じるようにすると、密閉することができる。
  3. 鼻に口を当て、呼気を吹き込む。
  4. 口を鼻から離し、閉じた口を開け、胸がしぼんでいくのを確認し、病人が吐く息を頬で感じとる。この動作を30回の心臓マッサージをする度に2回続けて行う。
  • 乳児への人工呼吸
  1. 気道確保の体位を取り、下あごを押し出す。
  2. 乳児の場合、口と鼻の距離が短いので、口と鼻を一緒に覆い、胸が膨らむまで息を吹き込む。
  3. 口を離し、胸がしぼんでいくのを確認し、病人が吐く息を頬で感じとる。この動作を30回の心臓マッサージをする度に2回続けて行う。

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桑間 雄一郎 医師(監修)

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所属
東京海上記念診療所(マンハッタン診療所)
肩書
院長
住所
55 East 34th Street 2nd Floor New York, NY 10016
TEL
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FAX
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