教育education
シュタイナー教育とは ?
1. シュタイナー教育ってどんな人に育てるの?
シュタイナー教育は「自由への教育」と言われており、自由の核となる「自我」の形成を大切にします。自分の意志で行動し、社会や人々と良いつながりを持って、その中で自分が何をすべきかを考えて行動、実践することが出来る人を育てます。
「人智学」でいう、人は「精神」と「魂(心)」と「からだ」の3つから成り立っていると考えます。そして人が今世で授かった使命を全うするためには、この3つのバランスがとれた教育はとても大切であると考えます。こういった理由から、シュタイナー教育では大人になるまでの精神発達段階に即した内容を選びながら、バランスよく育てていくためのカリキュラムが組まれています。
ルドルフ・シュタイナー(シュタイナー教育の考案者)
*1861-1925年、人智学を確立した哲学者。
*人智学とは、世界は目に見えない「精神世界」、「物質世界」、「魂(心)の世界」で成り立っているという考え方。
2. 「子供に畏敬の念をもつ」とは?
子供は両親を選んで生まれてきています。生まれた瞬間から親とは全く別の存在であり、分身ではありません。「人智学」では仏教と同じように輪廻転成を信じ、人は何度も生まれ変わると言われています。これは日本人の私たちには宗教的観点から見ても親しみやすい考え方かもしれません。両親を選んで、この場所で自分の使命を果たそうと生まれてきた子供達は、兄弟でも全く違った個性を持ち合わせているため、性格も成長発達ペースも違っています。よって、学び方もそれぞれあります。そしてそれは違っていて良いのです。その子の持っている「輝くもの」を引き出すことに情熱と焦点を当てて育てる、シュタイナー教育者はそう信じ、単に知識を伝えるだけではなく、それぞれが面白いと思う視点に目を向けた教育を志すとともに、常に「畏敬の念」を持って子供達と向き合う姿勢を大切にしています。
3. 人は「7年周期」で成長していく
- 0〜7歳まで:
身体を作って動かし、意志を育む時期。この時期の子どもは内的にも外的にも周りの大人の模倣で育つため、毎日の生活のリズムを重視し、「世界は善である」と理解できるように、身の回りには子どもに吸収されて良いものを置くようにする。 - 7〜14歳まで:
美しいもの・調和のとれたものに強く惹きつけられる時期なので、「世界は美しい」と理解できるように、絵画や音楽、オイリュトミーなどの芸術に触れ、感情や情緒、創造的で個性的な心の動きを育む。 - 14〜21歳まで:
自我が発達する時期。「世界は真である」ことを求めるため、抽象的な概念によって世界についての理解を深め、思考力・知力・判断力を育み、自分自身を見つけ、自分の歩む道を選び取る。
4. 全身の感覚「12の感覚」を育てる
「学習」とは体験を通して学ぶことであると言われています。幼児は全身が感覚器であり、幼児期は良いものも悪いものも区別せず、全部を自分の中に取り込みます。両親のすることを教えてもいないのに、そっくりそのまま真似してごっこ遊びをする姿をよく見かけることがあると思います。つまり子供達は大人のすることを模倣して育ち、それは人間の進化と同じことだと言えます。生まれてから寝返りを覚え、ハイハイ歩き、そしていずれ立って歩くという普遍的な成長もそれにしかりです。このように幼児は周りの大人をお手本として育つため、説明することよりも子供の目の前で見本を見せることが人間らしく育つために必要なことなのです。そして子供は全てを吸収するので、私達大人は日頃の生活の中で、子供の成長過程で真似してもいいような言動をとることはとても大切な意識すべきことの一つだと考えます。
5. 7歳までの「体づくり」と「自由遊び」の大切さ
シュタイナー教育では、人間の一生は7年周期で成長すると前述しましたが、特に0−7歳では「体づくり」を重んじ、「意志」の力を育てる時期だと言われています。体をつくる大切な時期に、早期教育などを受けさせると、本来からだの方に行くべきエネルギーが頭(思考)に集中し、自分の感覚を使って経験をせずに終わるような学習方法に陥りがちです。この時期の子供達は周りの大人をお手本として育つため、言葉で伝えるよりも模倣を繰り返すことによって社会性を学び、人間らしく育っていきます。子供達が、よりこの世界のことを良い場所だと実感でき、自分のことを大切に出来る人間へと成長するために、自らが体験し、失敗を繰り返し、その中から新しい発見をする、その繰り返しが「学習」であるとシュタイナーは言います。
6. 「教育は芸術である」
芸術は「12感覚」を育てるのに必要不可欠なものです。シュタイナー教育では、芸術活動を通して学習を行います。私たちは宇宙の中にある地球という惑星に生まれ、人間として何らかの使命を果たすためにこの世にこの時代を選んで生きることを決めてきました。自然の摂理に従い、与えられた環境に感謝して生きることは大切なことです。生まれる時に自ら決めてきた使命を全身全霊で全うするため、個人の持っているあらゆる感覚を芸術の力によってふんだんに引き出してあげることで、成人した時に何かを作り出す力を持った人間となります。考えたこと、思いついたことを自らの力で何かに表現できる創造力が備わった人間になるのです。創造したものによって人々を幸せにした瞬間、人間は生きていることに充実感を感じるものだと信じます。自らの存在に価値を見い出せて、更にそれが人の役に立つことであったり、人に喜んでもらえることは、私たちが望んでいる人間としての純粋な欲望ではないでしょうか。
7. まだ見えない人間本来の未来を洞察する力
見えている部分だけに意識を向けるのではなく、まだ見えていない部分の洞察を深め、子供達の未来は潜在的には既に存在しているという教育観念は、シュタイナー教育の最も大切な哲学と言えるでしょう。
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